比丘尼の残夢【完】
追い出したのなんて初めて聞いた。

と言うか、本人が言わなければわからないのだけど。

気に入られているのなら良かったです。

今日はいろいろ教えて貰えてスッキリした。


「ありがとうごぜぇました!」

裏口まで送って貰い私が車を降りようとすると、それまで無言で何か考え込んでいた医者に腕を掴まれた。


「ナナミ、俺と組まないか」

「へ」

「君もご主人様に手術を受けて貰いたいだろう? 策がある。まぁ聞け」

医者の話しだした計画は、お利口でない私が聞いても全く巧く行くとは思えなかった。

たった今思いついたとしか思えない。

首を縦に振れずにいた。


「このままあいつにくたばられるよりは良いと思わんか」

それはそうですが。


「来週また来るから、その時に頼んだぞ」

有無を言わせず医者はそう言って行ってしまったが、やっぱり、はいとは言えなかった。
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