比丘尼の残夢【完】

※scene7『美味しいお仕置き』

その日は朝からしとしとと冷たい雨が降っていて、庭の紫陽花が美しさを増していた。

朝ご飯を食べなかったら元気が出なくて、この昼ご飯も食べてはいけないのだと思ったら気持ちが落ち込んだ。


「... 大丈夫なのか、ナナミ。
何処が痛い? 腹だろ?」

私が食べないと同じく食事に手をつけないご主人様を目の前にして、申し訳なくなってさらに辛い。


これからこの人を騙さなくてはならないなんて、どうしたら良いのだろう。


「... わからないんですけど、身体がだるくって... 」

「戻って寝ていなさい。午後から医者がくるから見て貰おう」

そうです、その医者がこうするようにと。


「たぶんお前さんは食い過ぎだ。心配しないで大丈夫」

私を安心させるようにご主人様は笑ったが、心配をかけているのは私だ。

しかも、仮病の。


「すみませんです... 下がらせて頂きます」

ご主人様は病気のプロだ。

一緒にいると、仮病がバレてしまいそうで怖い。
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