比丘尼の残夢【完】

※scene13『その気になれば良いじゃない』

美味しい食事も喉を通らなかった。


「具合悪いのか...... 」

それは貴方の方ではないか。

なんともない振りばかりするから、こうやって騙されてしまっていたのだ。


腹が立つ。




風呂上がりに水を被って身を清め、苦行に挑む尼の気持ちでご主人様の部屋の戸を叩いた。

ご主人様は既に寝巻姿で、だらしなく寝転んで読書灯の下何か読んでいた。


「な、なんだ?」

私の思い詰めた顔を見て、怯えたように起き上がった。


「私、大人になりました!」

「へ?」

「月のものあります! もう大人です... !」

「そ、そうなんだ... それは、おめでとう!」

誤魔化されては大変だ。

加えてご主人様は誤魔化すことも名人だ。


「後生ですから、抱いてくだせえ!
今日! 今! すぐ!!」
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