アクアマリンの秘密
* * *



ビーラルアクアマリンというところに移動してから1週間。
あたしはまだ、抜け殻のような毎日を過ごしている。



「姫、朝食の準備が整ったそうですが…。」

「今行くわ。」



瑠香という剣士があたしの付き人をしてくれている。
とても有能だってことはすぐに分かった。
だけど…以前のあたしと何か関わりがあったのかとか、そういうことは全く分からない。




「ねぇ…瑠香。」

「何でしょうか?」

「…こうなる前のあたしを…知ってる?」

「こうなる前、とはどういう意味でしょうか?」

「…あたしが今みたく、何も覚えていない状態になる前…。
あたしがちゃんと…自分の名前を知っていた頃のあたしを…あなたは知ってる?」

「…ええ。存じ上げております。」

「教えてくれないかしら?」

「なぜですか?」

「え?」

「なぜ…急にそんなことを…。」

「なんだかとても…大切なことを忘れてしまっているような気がして…。」

「大切なこと…ですか?」

「ええ。
あたしを守ると言ってくれた人が…誰だか分からないの。
…でも思い出したいの。」



霧の中にいるかのように見えないその人。
でも…あたし…

< 630 / 678 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop