恋~れんごく~獄
意外とその内容の普通さに、武浩は落胆し、そこでその日記を読むのを止めた。


-この子に日記、返してやるか-


次の日、武浩は図書館の入口前まで来ていた。彼は、奈津子に直接例の日記を渡そうとしていた訳ではなかった。
居場所と言おうか、頻繁に彼女が現れそうな場所は、この日記から見当がつく。
美術サークルが行われている教室に届けに行けばいい。だが、それをやると、武浩が勝手に日記を読んだ事がばれてしまう。
図書館で拾ったのだから、図書館のカウンターに届けた方がいい。武浩はそう考え、早速図書館の扉を開き、そのままつかつかとカウンターを目指した。
しかし、突然武浩はぴたっと足を止めた。


-あの女の子は、もしかして昨日の-


武浩の目指していたカウンターには、すでに先客がいた。武浩は、適当に本棚から何かしらの本を抜き取り、本を借りにきたふりをして彼女の後ろに立った。
武浩は、受付員とその女の子の会話を盗み聞きした。


…武浩の思った通りだった。
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