みどりの日
 この第三高架を超えてしばらく歩き、件の埋立地、新都と呼ばれる地区へ入ると、我が家へはもう少し、である。

 ほぼ形を成していない、港内での通行証を貿易管理局のゲートキーパーに提示する。

 彼は白く四角いそれを真鍮の機械に差し込む。聞きなれた蒸気の噴出音と共にゲートのロックが外れ、通行証が返された。

 エンジン(機関)カードと呼ばれる一種の割符のようなものだ。

 新都に入り、いくつかの路地を行き、朝早くから開いているカフェ(カフェとは名ばかりで、夜は居酒屋、昼は喫茶店まがいという節操のない店である)でブルストとキャベツの酢漬けを買い、そしてようやく、我が家へと辿り着いた。

 殆どバラック小屋と言っても差し支えのない、我ながら質素な家だ。
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