君しかいらない


「お母さん、今日はご馳走なんだよね?」

ミニトマトが踊っているのと同じくらい陽気な真理子の声が聞こえる。



「そうだよ。今日は真理子の小学校の入学祝いだからね」

煮だったお鍋とまな板と

せわしなく動く私の横で真理子はいつになくご機嫌だ。


「真理子、ランドセルしょうからもうお姉ちゃんなんだよ。」

威張りながら

ミニトマトにこっそり手をのばして

宝物を捕まえた手を後ろに隠して

いそいそと台所を出ていく。


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