君しかいらない
俯き、涙をこぼす私の頭に

大きな手の平が触れようとしたけど

すぐにその手を引っ込めて

小さな深呼吸をした彼が


「もう一つ君に教えたい事があるんだ…」と、また遠い海の果てを見るような眼差しで言った。

「何?」

「あの頃の君に伝えても到底、理解なんてしてもらえないと思っていたけど…

今の君なら…」


「何?」

涙でぐちゃぐちゃの顔を両手で拭いながら

横目で彼を盗み見た。



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