いつもより少し大きいベッドの上で絶頂感に浸る。
男は私に背を向けて眠る。

‥‥緊張感ないなぁ。

当たり前か。

いつもの男だって行為が終わればすぐに金を出して去る。

でも‥‥

この人は違う。


一瞬にして満たされた。
あんなに心地よかったのは
初めてだった。
本気で叫んだのも初めてだった。

何が違うのだろうか。


「‥‥っ、おはよ」

男がひとつ欠伸をして
目を覚ます。
私の方に身体を向ける。
顔が近いっ‥‥

「おはよ‥‥ございます」

何故か敬語。
おはようっていっても、
まだ夜の10時。


“俺を慰めてよ”


どうしてこの人は
泣いていたんだろう。


男は脱いだシャツを着て、
ネクタイを締める。

「ありがとね」

と、私の手に1万円札を
3枚握らせる。

‥‥高そうな財布。

「帰れる?」
「あっ、大丈夫です」
「ならよかった」

男は私に微笑みかけ、
部屋を出た。


不思議な人。


あとには煙草の匂いと
寂しさに似た気持ちが残った。
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