ピクシーホルン
「獣医博士、麻酔はいけないのですか?」
「当たり前です!精霊神獣がどんな状態かも知らず、むやみに麻酔を打つなんて…今後このような場合は私の許可をとって下さい」
「…わ、かりました」
兵は唖然としながら、頷く。
「宰相、皆にそうお伝え下さい」
「わかりました」
「さ、私を中へ…」
兵は小さな小窓から中を見、ゆっくり扉を開けた。
ナタリーはその光景に目を見張った。
「な…っなぜ!鎖で繋いでいるの!?」
ドビシーは両手は鎖で壁に繋げられ、両足も鎖で縛られて鎖の先は重りがついており目隠し、口にも枷がされていた。
まさに囚人だった。
「…あの船でこの状態で見つかったのです。精霊神獣は不思議な力を持っておりますから…暴れられてしまったら船が沈むとこだったのでしょう」
―だからって…こんな酷い。あんなに傷付いた体で家族、仲間から離され意味もわからず身動きさえままらない。まだ子供の神獣だというのに…
ナタリーは知らず知らず涙を零していた。