鏡村【短編】
かがみむら
ゴーー、という音が耳の奥底まで響いてくる。


二十歳を過ぎたばかりの大学生等4人を乗せた車はトンネル内を走行していた。


「このトンネル今までで一番長いんじゃない」


そんなどうでも良いことを会話に持ち込み、お茶を一口飲み込む。


助手席に座る彼女、中山玲(ナカヤマ レイ)は長時間のドライブに少し疲れが出てきたのか、ダランとシートにもたれ込む形となっていた。


「この道はこんな長いトンネル幾つもあるみたいだよ」


草食男子、この言葉がピッタリと当てはまるであろう彼はそんな風に話を返す。


彼は佐藤健人(サトウ ケント)、サークルで仲良くなったのをきっかけに出来た玲の恋人。


玲の隣、運転席に座り慎重に車を進める彼はこの場に揃った仲間の中で唯一免許を持っていた為、自然とハンドルを握ることとなってしまった。


こんな二人の後ろの席には、同じくサークル仲間であり彼氏彼女の関係である井川智治(イガワ トモハル)と橋本亜美(ハシモト アミ)。


亜美は既に熟睡の域に居り、隣の智治はそんな彼女の寝顔を変態かと思うほどパシャパシャと忙しなく携帯のカメラに納めていた。



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