ADULT CHILDREN
一度だけ

愛美にシンナーを吸わないかと誘われた事がある。


「さえこも吸ってみる?」


「あ、私は…」


「いいよ。…吸わない方がいい。やめられなくなるから。」


愛美のその時の顔がとても悲しそうだった事を今でも覚えてる。


シンナーは吸わなかったけど、みんなが吸う時は一緒の場所にいた。


みんなが変な事をしないように。

後藤さんの家は7階で、ぼけてベランダに出て危うく落ちそうになった人もいたらしいから。


愛美が他の男に襲われないように。


監視役という感じだった。


でも小さな部屋でみんなが一気にシンナーを吸うと、部屋中に臭いが充満して自分がフラフラする事もあった。


そんな時
男友達に押し倒されたりもした。

身体に力が入らず、抵抗できなくて、もうだめだって時にいつも私を助けてくれたのは
後藤さんだった。

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