ADULT CHILDREN
部屋に戻って目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。


佐藤さんは机に向かい退職願を書いていた。



「どういうつもり。どうしてそんな物…」


冷たく言う私に佐藤さんはいつも通り優しく言った。



「不安なんでしょ?それなら男しかいない職場に変わろうと思って」



嫌味なんかではないとすぐにわかった。
佐藤さんは今の仕事が大好きだといつも私に言っていた。それなのに今、私はそれを奪おうとしている。


「あっでもさ、すぐには無理だから今月いっぱいになるけどいい?」



何の躊躇いも見せない姿が私に焦りと苛立ちを含ませる。



「馬鹿じゃないの!?仕事好きなんでしょ!?なら私と別れた方がいいじゃん」






「…俺はさえこちゃんが幸せじゃないと幸せなれないから、それに比べたら仕事なんて別にどうでもいいんだ。もう不安にさせないよ。ごめんね」




私が悪いのに


佐藤さんは何も悪くないのに



この人はやっぱり少し変わってる。

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