ADULT CHILDREN
仲の良い友達には自分から言い出そうとしなかった。




あんなに騒いで
遠すぎる未来まで馬鹿みたいに語ってしまったから
二股されていたなんて恥ずかしくて言えなかった。


友達は順調で
毎日のように彼氏が教室まで来たり、手紙を交換したりしていた。


二股されている事も知らずに浮かれていた自分が惨めに思えた。


幸せそうな友達が羨ましかった。


親にも愛されて

彼氏にも愛されて。


羨ましくて何度も胸に嫉妬心を抱いた。



自分でも気づかぬ間に
いつも彼を目で追っていた。

彼への気持ちがなかなか冷めきれない頃。


まだ生々しい傷痕を刺されるような思いをした。


学校からの帰り道、自転車に乗った彼を見かけた。

一人じゃない。


もう一人の彼女と自転車に二人乗りして楽しそうに笑っている。


彼等の乗った自転車が私に近づいて来る。


どうしよう。
どんな顔をすればいいんだろう。


身を隠す場所もなく慌てていると
自転車は私を横切っていく。


彼は私に気付かなかった。


気付かないフリをしたのかもしれない。



彼女だけを見ていた。



本当なら
私が座っていたかもしれない場所にはあの子がいて


本当なら
私がもたれていたかもしれない彼の背中にあの子が顔を寄せて


本当なら
私だけに見せてくれていたかもしれない笑顔を
あの子は一人占めしている。



もう私には入る隙間などないんだと目の当たりにした時、頬に涙が伝った。

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