あなたの大切なもの

もういい

家に帰り、声を殺して泣いた。
何分――何時間でも泣いた。
まくらに顔をうずめて。
何時間泣いたか分からない。



次の日、腫れた目を冷やして、学校へ行った。

目に入ってきたのは、一番見たくないものだった。

純と新しい彼女の光景。
手をつないで、幸せそうに歩く、2人の姿。


その場から、逃げ出したかった。
けれど、それは自分から逃げたことにもなる。
それだけは嫌だった。





普通に学校へ行き、普通に卒業した。

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