夜明け前の桜道

再会。

葵が、私の家に居候してから１週間が経った。

｢葵、忘れ物ない？｣
私は、葵の部屋を覗くと鞄の中に、真新しいノートを何冊か入れている最中だった。
｢うん、大丈夫だと思う｣
私の質問に、うんと頷く。

｢そう…教科書は先生から貰えるから｣
そう言って、部屋を出ようとすると、背後から、｢ねぇ、みてみて｣

無邪気にはしゃぐ声が聞こえる。
｢僕の制服姿…どう？｣

私の通ってる学校の男性の制服は、学ランではなく、Yシャツにネクタイとブレザー。

葵は、その制服が良く似合っている。
｢とても、似合ってるわよ｣
微笑んで、パチパチと拍手をした。

｢本当？やった♪…でも、この制服苦しいよ｣ウゴウゴと、首を左右に振る。

私は、ふぅと溜め息を吐くと葵のYシャツの第１ボタンを外して、ネクタイを軽く緩ませた。

｢これでどう？…第一印象が大事だから、これ以上は無理よ｣

葵は、ありがとう。と言って、抱きついて来た。

｢はいはい…分かったから、学校に向かうわよ｣