光と闇 ~鬼と自然と人
第二話
暗黒が全てを支配していた。
黒月王神は、地上世界での出来事を青白き水晶より見ていた。
「口惜しや…。」

もう少しで叶うはずであったものをあと一歩で…。

「邪神か。」
「はい。申し訳ございません。あと少しの所にとんだ邪魔が入りまして…。」

「ムスヒヒの翡翠の勾玉は出てはこなかたのか?」

「はい。鬼神に探させましたがついに出ては…しかしながらこの事の結末あまりにも出来すぎています。さては、天つ原より先手を打たれいた節があるように思われまする。」

ゆっくり邪神に向き直ると黒月王神は問うた。

「なぜ、そう思うのか」
「はい。事前に龍珠姫より使われし樹木神を置きムスヒヒを守り目として代々守らせていた。おそらくあのムスヒヒ、白月よりの使者が生まれ変わりし者ではないかと…」

「うむ…」
そういうときびすを返しほの白き月を見た。

「それからこれを…」
そういうと、邪神はコノハナノサクラビメの淡い桃色のかけらを差し出した。

「これは…勾玉は手には入らぬがこれなれば代わりにはなるかもしれぬな。」

掌で弄びながらながら、策をめぐらせている。

「どれぐらいで覚醒するか?」

「おそらく数百年はかかるかと…」

「申し上げます、大王神様。龍珠姫様がお見えでございます。」

鬼神の後ろには長く黒髪を赤い紐で結って、白き着物に古びた脇差しを差し、薄紫色の羽織ものを頭からかけて佇んでいた。
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