逢いたくて


「ぇ・・?一体、どうい・・うこと?」

「わしは・・わしはの・・脱藩することに決めたがじゃ。」

「脱っ・・藩?」


脱藩。

それはもっとも重い罪。

この土佐藩から亡命することであり、見つかれば家族もろとも罰せられる重い罪。


「なんで・・?なんで脱藩なんてするの?」

「わしはな・・・嫌気がさしたんじゃ・・。」

「嫌気?」

「土佐勤王党じゃ・・・武市さんじゃ・・・。」


龍馬はアタシを離すと海を見た。


「わしは下士、上士の関係を変えたかった・・この世の中全てを変えたかった。」

「うん・・知っているよ。」

「わしは同じ考えの武市さんに心底惚れた・・男としてあの人はまっことすごか人だと思っとった。」

「思っていた・・?」

「武市さんは、小さか男じゃった・・。」


龍馬の目には寂しそうな色が映っていた。


「武市さんは、意見の違う吉田東洋を・・。」

「暗殺させた。」


唇を固く結び辛そうにしていた龍馬の言葉をアタシは継いだ。


「そうじゃ、わしはもう嫌じゃ。こげな小さき考え方しかできん・・こげな土佐にしかこだわれん仲間なんぞ、一緒にいるだけで辛い。」

「龍馬・・。」


龍馬は言いづらそうに俯いた。




「紅葉・・わしは明日出ていこうと思う。」


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