トリックス☆スターズ
あたしはずっとクリーダが黙ってるのが不思議だった。
まさか諦めたとも思えないんだけど、何でずっと黙ってるんだろう?
クリーダは目だけこっちに向けて、ただずっと黙っていた。

「「よしコイツ等を運び出せ」」

キモい2人の口調は元に戻っている、兵士を使ってあたし達を外に運び出す様だ。
呼ばれて入ってきた兵士は、さっき将軍の元に案内してくれた隊長とその部下だったよ。
あたしはもう後がないと思い、隊長達に一生懸命訴えていた。

「「りりたくらいぉーらるれれぉー(死にたくないよーッ!助けてよーッ!)」」

あたしは完全に素に戻ってる、でもどうしょうもないんだから。
隊長達は1度もあたしと目を合わさなかった、でも隊長が一言小さな声でこう言ったんだ。

「…すまない」

うん、それは分かってるよ。

それからのあたしは、運ばれてる間ずっと泣いてたんだ。
そして兵隊達の横を通り過ぎる度に必死に訴えかけた、無駄だと分かってたけどそうするしかなかった。
彼等は首を動かさずともその目は悲痛をあらわにしていた、この状況って本当にどうしようもないんだな。
さすがのあたしも段々諦めを感じて来た頃、クリーダがあたしの手をキュッと握ってくれた。
そっか、あたしは一人じゃないんだ、クリーダと一緒ならまぁいっかな。

あたし達はルクトイのまん前に板ごと設置された。
最後はルクトイの主砲か、それなら一瞬だからきっと苦しむ事はないだろうな。
そう思って虚ろになった目でルクトイの主砲を見つめた。
遠く離れたテントの前に、サルファー将軍とあのキモい2人、そして多くの兵士が並んでこちらを見ているのが見える。
なんだ、結構人がいたんじゃないか、今までどこに隠れていたんだか。

もうクリーダだけを見ていよう、一番最後までずっと見ていよう。

『ふいーら…るっろいっほらお(クリーダ、ずっと一緒だよ)』

その言葉に、クリーダは微笑んでくれたんだ。
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