@名もなき冒険者
すると白い鎧の男は一瞬で間合いに入ったと思うと、顔を近づけ真顔で言った。

『どんな理由で故郷を出てきたか知らないけどさ、
 俺たち冒険者って奴はチャンスを逃すって事は、
 場合によっては生きれるチャンスも逃す事にもなりかねない。
 これはよく覚えとくんだな』

そう言うと街の中に入っていくのを、わたしはただ呆然として見送った。

なんかありがちな展開にちょっと恥ずかしさを感じる。

あ、そういえばお礼どころか名前も聞かなかったな。

白い鎧の男にもらった杖をぎゅっと握った。



あの白い鎧の男からもらった杖は、とても扱いやすかった。

それに見た目もいい、支給品の装備のクオリティは低く、組み立てぶりがまるで素人細工だった。


おかげで今は装備とのバランスが悪いけど…。



─ かけだしの冒険者

それにしても、他の冒険者はどうしてるんだろう?

ちょっと偵察してみようか?


しかし、辺りを見渡してみたけど人影は見えなかった。

あれだけ街には人がいるのに、それだけ外は危険なんだろうか。



誰か通るまでと思って雑魚狩りを続けたけど、結局薄暗くなっても誰も見かけなかった。

しょうがない、日が傾いてきたし街に戻ろう。

コンパスと地図はあるから余り迷う事はないだろうけど、闇はモンスターに力を与える、その闇の作用はモンスターのみならず人の闇も例外じゃないけども。

急ぎ足で街に向かい、門をくぐる頃にはすっかり影が消えていた。
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