Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 そんな僕を掴んだまま、牙王は吼えた。

「今までに、こんな思いをしたのは、キサマが初めてだ……!
 殺してやる!
 殺して、引き裂いて!
 キサマを、オレだけのモノにしてヤる!!
 あの男には、一口たりともヤるモノか!!!!」

 …………!


 挑発でも、嘲りでもない。

 牙王の真実の叫びだった。

 その思いは。

 僕が凛花に抱いた思いに、あまりに良く似ていて。


 ………………………………笑えた。

 悲しいくらいに。

 誰かの代わり、ではない。

 魅了に捕らわれない、真実の愛。

 僕が。

 僕が、本当に、心から欲しかったモノを、こんな所で貰う事になるなんて………!

 これは。

 歪みきっては、いたが、牙王の愛以外の何モノでもなかった。

「……ナニがおかしい!」

 僕の表情を見て、牙王が吼える。

「………吸血鬼は………ひどく……不器用な生きモノ……だな……と、思って……な」

 優しく、穏やかに人を愛することなんか、できない。

 本気で愛すれば、愛するほどに激しく、引き裂く。

 ただ、それだけだ。
 
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