Holy×Kiss~闇の皇子より愛を込めて~【吸血鬼伝説】
 そのタイミングを見計らって、僕は、牙王のみぞおちを思いきり蹴りつけた。

「うぉっ!」

 牙王はたまらず僕の腕を放してうずくまる。

 自由を手に入れた僕は、エンキの近くに滑り込むように退いた。

 気をつけていた、爪以外の全身が、あっという間に、ねとねとの粘液まみれになった。

 その、生臭さに、思わず顔をしかめる。

 僕は、エンキに向かって逃げて来たわけではない。

 プライドを捨てたのだ。

 牙王に勝つ為に。

 ………!

 ぼとぼとのエンキの粘液を滴らせながら、僕は、牙王に向かって、再び飛んだ。

 案の定。

 牙王に受けたダメージで、身体が重い。

 スピードの殺された攻撃に、牙王が嘲り笑う。

 抑えていた腹から手を離すと、もう一度僕を捕まえようと手を伸ばした。

 が。

 牙王の顔が、驚愕に歪んだ。
 
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