アマテラス!
天照(テンショウ)、十九歳、男。

この言祝(コトホギ)神社の跡継ぎだ。
不景気だろうと頭が悪かろうと就職口には困らない。
だが正直先行きが心配だ。



この国ヤマトは精霊信仰が盛んな国だ。
国の至る場所に神社があり、人々は信心深く熱心に参拝する。
しかも神社は中央府に給付金を貰い手厚く保護をされている。

神官は公務員のようなものだ。
神学校さえ卒業すれば何処かの神社に配属され、職にあぶれることもない。
給与は国から与えられるし、クビになることも潰れることもない。
手当も良い。


特に国の端、東西南北に建てられた四つの神殿は国を守護する神々が祭られており、巨額の国の予算が割かれている。
その四つの神殿、四社の神官になるためには中央府から指名される必要がある。
狭き門だが国の最も名誉ある職業だ。


だがしかし、ここ数年の科学技術の急速な進歩に伴い、ヤマトの精霊信仰は地に堕ちた。
参拝客は年々減り、中央府からの給付金も激減した。

正直うちくらいの小さな規模の神社は維持費だけで一杯一杯。
贅沢する余裕なんて露ほど無い。



「今日もどうせ米とたくあんだけだろうな……」


深い溜め息と共に母屋の戸を開けた。
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