ぼくたちは一生懸命な恋をしている
俺がたくさんの女の子と仲良くなれるのはなぜか知ってる?イケメンってだけが理由じゃないよ。そりゃあ見た目がイイに越したことはないけど。これは容姿の問題じゃない。俺が、それだけ努力してるってことなんだ。

まず、勇気をもって話しかけること。俺ってじつは人見知りなんだよ、言っても誰も信じてくれないけど。知らない人に話しかけるのって、ものすごく勇気がいることだって俺は知ってる。だから、仲良くなりたいと思った子には自分から話しかけるんだ。話しかけてもらえるのを期待するなんて、女の子に勇気を出せと言っているようなもの。失礼だし、かっこよくないからね。

それから、話を聞くこと。なにが好きか、どんな性格なのか、いろんな質問をして、その子のことを知る。自分の話はしなくていい。アピールなら、話に耳を傾けている最中の笑顔とあいづちくらいでじゅうぶん。一緒にいると楽しいと思ってもらえることが大切。そのうち相手の子も俺のことを知りたいと思ってくれる。そこから会話がもっと弾んでいくんだ。

これは、女の子だけじゃなく誰が相手でも言える。
相手を思いやること。心を尽くすこと。そういう努力をしないで人と仲良くなんてなれるわけないんだ――まぁ、あいりちゃんにはいろいろ通じなかったんだけど、それは例外ってことにしておいて。

俺のことを嫌ってる男子諸君は、そのへんがわかってないみたい。気持ちはわかるよ。俺も昔はそうだったから。力のあるヤツを憎むことで、自分のダメなとこを見ないフリしてた。そのほうがなにも考えなくていいし、楽だもんね。でも、気づいて努力すれば変われるんだ。ほら、俺はこんなにも変われた。だからキミたちも、うらやんでばかりいるその姿勢を正すところから始めてみたらどうかな。と、俺が提案したところで嫌味にしかならないだろうから、なにも言ってやらないけどね。

気づけるか、気づけないか。この違いって大きい。俺が気づけたのは円香ちゃんのおかげだった。気づいて努力する俺を、昔は応援してくれてたのに。円香ちゃんに褒めてもらえることが、なによりうれしかったのに。がんばればがんばった分だけ、俺たちの距離は遠くなってった。

邪険にされると、自分の根っこの部分が揺らぎそうになる。俺を導いてくれた人が、たどり着いた先で俺を否定してくる。だから、分けて考えることにした。
円香ちゃんと遠野は、ちがう人。
円香ちゃんは恩人で、遠野は天敵。
遠野はかわいくない。口うるさくて、堅苦しくて、ちっとも色っぽくない。ほんと、かわいくない。あんなヤツ、誰にも相手にされずに一生処女やってればいいんだ。
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