ぼくたちは一生懸命な恋をしている
「……秋山。アンタ、どうしちゃったのよ」

あんなに強い相手に食ってかかるなんて、らしくもない。突っ伏したままの男が座る椅子の足を軽く蹴ってみる。早く答えろと急かすと、くぐもった声がした。

「俺はいつだってカワイイ女の子のためには全力なんだよ」

「そうかしら。私にはこの上なく薄情な男に見えてたけど」

「だから遠野は処女なんだよ」

「う、うるさい。だいたい、アンタの言ってること意味が分からないのよ。どうしてあの流れで駿河さんの名前が出てくるの」

「男を見る目のない女には教えなーい」

どうやら真面目に取り合ってくれる気はないようだ。

「……遊びじゃ、なかったの?」

いつものように、気まぐれに、ゲームを攻略するみたいな感覚でいるのだと思っていた。だから、あいりちゃんに相手にされない情けない姿を、罰が当たったのだと面白がっていられたのに。さっきの王子へ立ち向かっていた姿は、これまでの軽薄さとはほど遠いものだった。

「いまさらそんなこと聞く?あいりちゃんと一緒にいたら、なんか、守ってあげたくなるの、わかんない?」

「……それは分かるわ。とても」

「だったら勘違いしないで、これまでどおりにしててよ」

やっと顔を上げた秋山は、見たことない真摯な目をしていた。

「あいりちゃんは遠野のこと気に入ってるから、きっとこれからも三人でいたがると思うんだよね。お前って勝手に遠慮してあいりちゃんのこと遠ざけそうだから、一応言っとく。返事は?」

「……分かってるわよ」

秋山が、変わっていく。あいりちゃんに、変えられていく。
もし本気なら、何も言えない。お節介に小言を挟むことさえ、できなくなってしまう。
それでも、二人と一緒にいろというの?
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