ふたまた彼氏

隣同士

意識が朦朧とする中
ふと、考えてみた。

コイツはいったい
誰なんだろうって。

見たこともなければ
聞いたこともない名前。

「…去年何組?」

『訳あって学校を
休んでたんだ。』

それが理由か
どうかは知らないが
とりあえずあたしは知らない。

知っても関係ないか。

ゆっくり眠りにつく。

コイツはあたしの知らない奴。


脳内にはそう、
インプットされた。

教室はガヤガヤと
にぎやかで
少し嫌気が差すけど
あたしは浅い眠りについた。

『ねぇねぇッッ!!』

さっきの奴が話しかけてくる。

当然のごとくシカト。

『まだ怒ってんのー?
だからごめんってばー。』

ケラケラと笑いながら
当たり前のように謝る。

「悪いと思ってるなら
笑いながら謝らないで。
気ぃ悪い…。」

言ってしまった。
ぱっと彼の方を見ると
悲しそうに俯いた。

『やっ…
まじごめんね…
ごめんなさい。』

語尾がだんだんと
下がっていった。

「そんなっ…
いいよ!
分かってくれたんなら。」

あまりに素直に謝るから
正直驚いた。

彼はまた
うんっと言い
お得意の笑顔で笑った。

どうやら彼の笑顔には
人の心を揺るがす
力があるみたい。
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