黙れヘタレ


「あー、五月病だー」

一番乗りに乗った私たちは
一番後ろの席に座った。

「あんたはいつもでしょ」

と、軽く突っ込まれる。

「なんか私らの青春
こんなものなのかー
って感じ」

「それ同感」

高3になり受験生となり
ほとんどの生徒が部活を
引退していく。
私は元から帰宅部だから
人より青春を味わってないかもしれない。
でも、金を使ってまで青春する気にはなれないね。
落ちこぼれですいません。

出発するバスのドアが閉まりそうな瞬間
一人の乗客が乗り込んできた。
年齢的に20代の女性で
ギャルに近い容姿をしていて
ケータイを耳に当てていた。

べつにマナーが悪いと
偉い子ちゃんみたいに言いたいんじゃなくて
その女性はドアの端で顔を隠すように立っていて
何度か指で目を拭っていた。

「失恋だね」

同じものを見ていたらしく
隣にいた小林が呟いた。
やはり泣いているのか…。


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