青蝶夢 *Ⅱ*
「お客さん」

「ごめんなさい
 やっぱり、降ります」

タクシーを降りる私に
貴方は言う。

「おまえ、何やって・・・」

私は、芳野の肩に両手を
回して、彼に抱きついた。

「怒らないでよ」

「怒ってねえよ
 
 どうした?
 忘れもの
 ・・・じゃねぇか」

「ヨシノ、どうしよう
 私・・・
 自分で自分の気持ちを
 抑えられない
 
 貴方に逢いたくて堪らなくて
 家を飛び出して来たの」

芳野の腕が、私を抱きしめる。

「馬鹿な奴
 それで
 子供は、どうした?」

「ママに預けてきたの」

「お前・・・」
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