青蝶夢 *Ⅱ*
貴方は、ベッドに上半身
裸で横になる伊吹と
俯く、私を見つめた。

私には、見えなかったけれど
貴方はきっと、とても
悲しい顔をしていたはず・・

「勝手に、すまない

 着替えたら、下に・・・」

それだけ言い残して
静かに、ドアは閉まる。

待って、違うの。

これは・・・

ううん、何も違わない。

私は、ついさっき

伊吹を選んだ。

『こんなはずじゃなかった』

芳野が、秘色の事を頼むと
病室で言ったあの時、俺は
後に、もしも芳野が秘色を
必要とする時がくれば奴に
返してやるつもりだった。

それなのに・・・
俺は、秘色を手放せ
なくなっていた。
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