好きだけじゃ足りない


それでも、言葉にするのはやっぱり怖い。
もしも嫌われたら…とか考えてたらどうしても言葉を声に出すのは難しくなる。



「メグ?言いたくないなら言わなくたって良いんだぞ?」

「う…ん……でもいつかは言わなきゃいけないから…」


伊織の心遣いが有り難いような、そうでないような。
今、甘やかされたら言えなくなってしまう。言わなくて良いんじゃないかって甘えてしまう。

膝の上に乗せたままの手をギュッと握りしめて、大きく深呼吸をしてから伊織に向き直った。



「あの…ね…?」

「うん?」

「いや……うん。」


まっすぐ伊織を見ていた視線を外してしまう。
どうしても悪い結果論が頭を過ぎって言葉を濁してしまう。

それほとまでに私が伊織に依存している証拠なのかはわからないけど、きっと今の私は伊織なしでは生きてはいけない。

だからこそ言わなきゃいけない。
避けては通れない道だから。



「――…円香さんに…言おうと思うの。」

「あぁ。まぁいつかは言わなきゃ駄目だからな。」

「うん…来週、帰った時に私が言う。」


返ってきたあっさりとした答えに多少なりとも安心した。
もしも、円香さんに話す理由を追求されたら私はごまかせない。
かと言っていつまでも黙ってはいられないとは思うけど。




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