天使の足跡
振り返らずに3階まで駆け上がった。

風を切って廊下を激走する。


(……逃げなくちゃ……! ……このままだと、捕まる──!!)


ほとんどの生徒たちは猛スピードで向かってくる癒威を前に、とっさに壁側に身をかわす。


「痛っ、なんだよ!?」


廊下を列になって歩く生徒の間を突き抜けたとき、思い切り体当たりした気がする。

だが、謝る余裕なんてない。

八杉たちも開けられた通路を追ってくる。



癒威と八杉が教室の前を走り抜けた時、彼らと同じC組の生徒が顔をのぞかせた。


「太田と八杉たちが走ってる!」

「なんか面白いことになってんじゃん!?」


その声を聞いた三谷と丹葉も廊下に出た。

しかしすでに姿は見えなくなっていた。


「どうするんだよ、三谷!?」


心配そうに丹葉が訊ねる。


「どうするったって……!」


息を切らした加奈が、ひしめき合う見物人を掻き分けてやってきた。


「太田くんは?」

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