紙吹雪




「武士になりてぇのは俺も勝っつぁんも同じ。百姓の倅っつーのも同じだろ?」




歳三の言葉にうなずく勝太。



─武士になりたい─



それは幼い頃から変わらない歳三の夢。

百姓の家に生まれた歳三は、高みを目指し歩んでいく武士の姿に憧れていた。




「なのに勝っつぁんは今や近藤家っつー武家の養子。比べて俺は奉公行ったり薬品売ったり…」




ふぅ、と息を吐いて遠くを見つめる歳三の瞳はどこか憂いを帯びていて。




「…何でこんなに違うかなぁ」




ぎゅっと口を結び悔しそうに顔を歪ませる歳三に、勝太はかつての自分を重ねた。




(俺は運がよかった)




たまたま今の父に才能を見つけてもらえたのだから。




(ただ、今の歳はまだ若い)




年が、ではなくその心の中の決意が。




「歳が…歳が何かに本気になったら、少しは変わるんじゃないか?」


「本気、に?」



歳三は体を起こし勝太に向き直る。




「あぁ。例えば…そうだな、一人の女を本気で愛してみる、とか?」




ニヤリと笑う勝太に歳三は嫌そうに顔を歪め




「………………無理、絶対無理」




と一刀両断。




「うん、言うと思ったけどな」




予想と寸分も違わぬ返答に苦笑するしかない勝太。


だが、勝太は思う。


もし歳にそれが出来たら…こいつは今の何倍も強くなる、と。




「まぁ歳も十七になったばっかだしな。ゆっくり考えればいいさ」




ははは、と口を大きく開けて笑う勝太に歳三は考え込むように右手で頭を掻いた。




(だってよ…一人の女に本気になるってことは、そいつだけに全て留まるってことだろ?そんな面倒なの、俺には無理。考えられない)




この時の歳三は、この後出会うことになる女のことなど想像すらしていなかった。



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