兎心の宝箱【短編集】
「ミリア、生き残っている三人の魔将に伝えて欲しい。各自砦を放棄、東の町グルニアと西の町ギルスへ進軍を開始せよ、と」
ミリアの顔に緊張が走る。
「行けませぬ。砦を放棄すれば北の町から人間共が殺到して参ります。グラン様は、勝負をお捨てになるのですか?」
勝負を捨てるつもりはないが、このまま行けば圧倒的に勇者が有利な状況で、対峙する事は免れない。
「ちょっとした最後の賭けだよ」
ミリアは、少しだけ悲しげな表情を見せたが次の瞬間には、微笑んで答えた。
「分かりました、必ず伝えましょう。グラン様、御武運を祈ります」
二千年前と変わらない笑顔。私は、その笑顔にそっと唇を近づけた。