精神の崩壊
誰も気付かぬままに……
 〈ウフフフフッ……〉
 〈アハハハハハハハハッ〉
 〈私の勝ちね……〉
 〈アーーーハハハハハハッ〉

 誰もが事件が解決したと疑わぬ中、女の笑い声が響き渡っていた。

 〈正春、千春、これでもう貴方達は元には戻れないわ〉
 〈貴方達はもう完全に私の物に為ったのよ…………〉
 〈私だけの物に……………〉

 そして、死んだ筈の正春の声が聞こえて来る。

 「草野静恵は死んだ筈だ」
 「君はいったい何者なんだ!」 
 すると、女の声質が変わりこう言った。

 〈これでも解らない?〉
 〈正春……千春……〉

 その声を聞き、正春は驚いて言った。

 「ま……まさか……そんな」
 「君は死んだ筈じゃ……」

 そして、女はその問いに勝ち誇った様にして応える。

 〈それじゃぁ正春、貴方があの日あの公園で千秋を見てから後、一度でも彼女をみた事あるかしら?〉

 そう言われてみれば、あれから一度も千秋の姿を見た事が無いのを思い出し正春は言った。

 「逢って無いがそれがどうしたんだ?………」
 〈ウフフフフッ〉
 〈彼女と私……〉
 〈背格好が良く似てると思わない?……………〉

 そう言って女は不気味な笑みを浮かべる。
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