精神の崩壊
 「背格好が似てるって……」

 正春がそう言うと女が笑いながら言った。

 〈アハハハハハッ〉
 〈彼女には、私の代わりに死んで貰ったわ〉
 〈あの日あの場所で起こった事件……覚えてるかしら?〉
 〈あれは私ではなく千秋だったのよ……ウフフフッ………〉

 女は、そう言って再びケラケラと笑い出した。

 「そんな……」
 「警察は君だと断定して!?」
 〈アハハハハハッ……〉
 〈視覚に頼りすぎた馬鹿な警察の判断の結果よ〉
 〈世間では、貴方達ももう死んだ人間なのよ〉
 〈背格好の似た親子……探すの大変だったのよ………〉

 女は、そう言いながら顔の表面を覆っていた物を剥がしだした。

 ベリベリッベリベリッ………

 そして、その下から瀬川静の顔が現れた。

 〈私は、これから千秋として生きて行くのよ……〉
 〈そして、貴方達はごく平凡なサラリーマン松田博文とその娘、松田美咲として生きて行くのよ…………〉
 〈良い病院紹介するからそこで整形すると良いわ〉

 瀬川静は天才特殊メイクアップアーティストの技術で様々な人間に変装し、声優だった頃のの特技を利用し声を変え他人に成り済まし犯罪を重ねていた。

 DVDと言う視覚を利用し、
自分を被害者とし捜査対象から外させる…………。
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