精神の崩壊
不安
 その頃、正春は被害者が瀬川静であった事を聞かされ、強いショックを受けていた。
 
 お世話になっていた女性が殺された。
 
 しかも、自分の絵に見立てられて。
 
 「畜生……」
 「もういい加減にしてくれ」
 
 そう言って、テーブルに雑誌をたたき付ける。
 
 バーーーーン
 
 と音がして、雑誌がテーブルから転がり落ちる。
 
 「キャッ……」
 
 その様子を見ていた千春が小さな悲鳴を上げ、ビクッとして縮こまる。
 
 「千春、すまん……」
 
 正春は、怯える千春を見て、慌てて謝り、気持ちを落ち着かせようと深呼吸をした。
 
 「どうしたの……」
 
 千春が正春に、そう聞いて来た。
 
 しかし、正春は千春に静が殺された等とは言えなかった。
 
 千春は、静に凄く懐いていたし、ニースを見て静の事をとても心配していたからだ。
 
 しかし、時期にニースで放送される……。
 
 それを考えると、正春は胸が痛かった。
 
 また、それと同時に犯人へ対する何知れぬ恐怖が正春に覆い被さって来た……。
 
 きっとまた事件は起こるはずだ。
 
 今度はだれが……。
 
 身内の者が狙われるかも知れない……。
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