精神の崩壊
 正春が不安に思いながら過ごしている時…

 ピルルルルルッ……ピルルルルルッ……

 電話が掛かって来た……。

 正春は、またいたずら電話か、それとも、また見立て殺人だろうか…、そう思いながら電話に出た。

 「はい、真田ですが」
 〈…………〉
 「もしもし、真田ですが…」
 〈正春…フフフッ…〉
 〈ニュース…見てくれてる〉
 〈貴方の…邪魔する奴は…〉
 〈私が、皆…消したげる…〉
 〈ウフッ…ウフフッ……〉

 それを聞いた瞬間、正春は血の気が引き、ガタガタと震え出した。

 脚から力が抜け、カクカクと動き、今にも崩れ落ちそうだ。

 しかし、正春は勇気を出して言った。

 「きっ…君は…だっ、誰だ」
 「ななな…何故こんな事を」

 すると、女が言った。

 〈ウフフッ…それはね…ウフフッ〉
 〈貴方を…愛してるから…〉
 〈ウフッ…ウフフッ〉
 〈ま・さ・は・る…ウフフフフッ〉

 ツーッツーッツーッツーッ……

 そう言って、女は電話を切った。

 手から、受話器が滑り落ち、一気に全身から力が抜け、正春は膝から崩れ落ちた。

 想像を絶する恐怖が正春を襲い、心から震え上がらせる。

 床の上に崩れ落ち、ガタガタと震え上がる正春に、千春が駆け寄って来た。

 「お父さんどうしたの……」

 それからの記憶は、余り残っていない……。
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