精神の崩壊
正春の暴走する思考、阿部と女への疑惑
 正春は、あの日の事を考えていた。

 そもそも女は何故、あんな所に居たのだろうか。

 自分の事を四六時中見張っている警察はともかく、あの女にそこまで解るのだろうか。

 そう言えば、阿部が乗っていた車が見付かったと言うニュースも無い。

 阿部はどうやって、あの林まで来たんだろうか。

 阿部の車が無くなっていれば、警察はそれを探すはずだ。

 しかし、それをしていない。

 阿部は、自分の車を使わなかったが、徒歩であそこへ来るのは無理だ。

 阿部は、誰かの車で来たに違いない。

 いったい誰の車で……。

 そうだ、あの時女はこう言ったじゃないか。

 『2人でずっと見ていた』

 阿部は、女の車で来た……。

 しかも、阿部が安心して無防備に乗っていた車、私を見張っていた車、もしくは林へと向かう私の車を目撃したであろう車……。

 それは、身内の車……。

 即ち、阿部を中心とした関係者に犯人が居る。

 しかし、私は人を殺した。

 通報すれば、また女が捕まれば、私の罪も露見する可能性がある……。

 でも解らない、阿部の関係者として、阿部はどうして女の声が解らなかったのだろう、もしかして阿部も事件に加担していたのだろうか。

 だとして、阿部はどうして殺されたのだろうか。

 じゃぁあの写真は……。

 この事件とは、無関係なのだろうか。
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