精神の崩壊
深まる溝
 警察や正春が様々な思考を巡らせる中、新な事件は起こっていた。

 警察のお互いを疑い合う心が捜査に溝を作り、また正春の警察へ対する疑いから来る突発的な行動が、更にそれに拍車を掛ける結果と成っていた。

 その為、今まで手の届いていた場所にも手が届かなく為り、目の届かなく為った場所も可なり増えていた。

 そして、そこを狙われてしまったのだ。

 その事件とは、5人の子供達が忽然と姿を消したのだ。

 その消えた少年と少女は、榊原小学校の生徒で、高橋智喜、桃川邦男、柳田香苗、渋田緑、野見山里奈の5人だそうだ。

 このニュースを見ていた正春と千春には、この名前に聞き覚えがあった。

 榊原小学校は、千春が通っている小学校で、千春はその5人に良く虐められていたのだ。

 その5人が消えた……。

 即ち、それは事件の始まりを意味する。

 あの残虐な女がまた動き出したのだ。

 女の手は、遂に子供達にも及んだ。

 子供達は、いったいどんな殺され方をするのだろうか。

 正春はそう思い、怯え、深い悲しみと絶望感に打ちひしがれていた。

 出来る事なら何も起こらないでほしい。

 そう願う正春の思いも虚しく事件は起こる事と為った。
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