精神の崩壊
 それから二日後、イメージが湧かず絵を描く事が出来なかった正春は、僅かに与えられた食事は千春に与え、殆ど水しか口にしていなかった正春は遂に倒れ込み苦しんでいた。

 「ゔぅーーーっ…………」
 「ゲホッゲホッ…………」
 「うわん」

 千春はそれを見て、部屋の片隅で小さく為り泣いている。

 そして、それを見た女が声を掛けながら入って来た。

 〈いったい何事?〉
 〈どうしたの正春?〉

 そして、女が屈み込み正春の様子を窺おうとした瞬間、女の首に絵筆が突き刺さった。

 グサッグチュッ…………

 〈ギヤーーーーーッ〉

 生々しい音と共に女の悲鳴がこだまし、女は正春はに覆い被さる様にしてもがき苦しみ出した。

 そこへ、今まで片隅で泣いていた千春が身体で隠していたトイレの水受けを高く掲げながら近付いて来て、女の頭に振り下ろした。

 ……ドガッ…………

 〈ヴギヤーーーーーッ〉

 悲鳴と共にバックリと割れた女の頭から鮮血がダラダラと流れ出し顔面を赤く染めて行く。

 そして、もがき苦しむ女の顔面から滴る生暖かい鮮血が正春の顔面や衣服を赤く染め上げて行く中、正春は必死に女を押しのけ千春の手をひき部屋から逃げ出した。

 痩せ衰えた今だからこそ可能な方法だった。
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