愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
その真剣な眼差しに射抜かれて、私は息を飲み込んだ。
一歩。
香椎くんが私に近づき、私の頬にそっと触れた。
ちょうどいい温度。
人肌ってこういう温度なんだってかんじるくらい。
熱すぎず、ほっとする温度がじわじわじわじわ皮膚を溶かし、私の内側へと入り込む。
「ヨロイを脱いでいいから」
どうしてそんなこと言うの?
「全ての人間の前で脱げなんて今は言わない。
だからせめて……オレの前だけは『綾渡セリ』、キミのままでいて」
大きな両手が私の両頬を包み込む。
じわじわじわじわ。
入り込んだ体温と言葉。
私の氷を溶かしていくから……氷が雫になって外へと出ていく。
「それでいい」
そっと引き寄せられ、香椎くんの腕の中。
私は泣いていた。
声を押し殺すようにただじっと……
涙で滲んだ視界。
私が彼の腕にすっぽり収まる直前に見たその風景は……
赤とオレンジの混じった空に、沈んでいく太陽。
それがちょっとだけ悲しくも、でもホッとするような温かみに満ちた風景で……
ああ、きっとこの瞬間を私は忘れられないだろうなと。
そんなふうに頭によぎった夕暮れだった。