聖霊の宴
リコの黒き紋様は確実に周りの命を、そして宿主であるリコの命を犯していく。
削られていく命の分だけ闇の力は倍増していく。
あふれでる障気はもはやシルクの光が浄化できる許容量を遥かに超えていた。
リコはシルクを見てめをほそめた。
「……見ていない」
『ええ、そうですね』
シルクは悲しみを受け入れ冷静を保っていた。
やるせなさはとうに無くなっていた。
覚悟とは決別だ。
迷い、焦燥、高慢、ありとあらゆる負の念との決別。
そして、それらを限りなく正なる感情へと昇華させ、それに決して慢心しないこと。
「もうリコは僕のことなど見えてはいない。
ルシファーに操られ生命を貪る、殺戮人形になっている。
彼女を壊さなければ世界は消える。それでも僕は彼女を救うよ」
シルクのそれは、その言葉に尽きる。
ミカエルはゆっくりとシルクの肩に手をおいた。
直接的に精霊が精霊使いに魔力を譲渡することはできない。
この行為はただの形式的なものに過ぎなかった。
それでもシルクは自身の身体の内側、それも深層遥か先に眠る魔力すらも涌き出てくるのを感じた。
「ミカエル、今までありがとう」
『ええ……シルク。
こちらこそ』
「そして……」
最後の一言をミカエルが聞こえていたのかは分からない。
しかし、強烈な光りに包まれながらもシルクとミカエルは確かに笑った。