聖霊の宴
ゲセニアが宴への参加資格を得た半日後。
漁師町からやってきたフリップ・クレイドルがある指名手配犯を断崖絶壁の崖へと追い詰めていた。
「はい、鬼ごっこはお仕舞い。僕の勝ち♪」
にこっと笑うフリップの瞳の奥は怖いくらいに冷ややかだった。
その足元で何かが這いずりまわっている。
「さて、おとなしく捕まるか、抵抗して殺されるかどっちが良い?」
詐欺師サーシャ・トーマスが恐怖に震える。
しかし後ろに回した手にはナイフが握られていた。
「変な気起こすと苦しむことになるから、おとなしく捕まってくれないかな?」
にっ。と笑うフリップ。
サーシャはすでにその覚悟を決めていた。
「……わかったわ。」
ゆっくりと立ち上がったサーシャがフリップの元に歩み寄る。
そして
「この怪物さえ始末したらアンタなんか――!!」
隠し持っていたナイフで怪物の眉間を貫いた。
「あーあ。バカな女だな……」
フリップは冷ややかに見つめる。
怪物からは紫色の液体が噴き出している。
「バカ?バカはアンタの方でしょ。捕まったってどうせ殺される身。だったらアンタを殺して逃げるに決まってるじゃ……?」
サーシャの視界が突如ぼやける。
フリップは不敵に笑っていた。