【短編】クリス王子とセシル姫
しばらく待たされたが、やがて絹の夜着に身を包んだセシルが戻ってきた。
長い髪はまとめて頭の後ろで留められている。
白い首筋や、少しのぞいた胸元が、部屋のほの暗い灯りの中映えて見える。

セシルは寝台に乗ると、クリスの側に正座して座った。

そして彼と向き合う。

なんだか改まったその態度に、クリスは少し戸惑いつつセシルを見ていた。

「アーサーが、謝ってたわ」

不意にセシルが口を開いた。「つまらない冗談言って悪かったって」

何も言えず、クリスはまた目を伏せた。
再び自己嫌悪が押し寄せる。

「私も、、、」

「いいよ、別に」

セシルの言葉を遮るようにクリスは言った。
この上セシルにまで謝られたら、本気で死にたくなりそうだ。

「分かってる。
ただの冗談に、ムキになったりするほうがおかしいって」

少しの間、沈黙が流れる。
セシルの顔が見れなくて、クリスは目を伏せたままだった。

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