【短編】クリス王子とセシル姫
一度それを自覚すると、溺れるように夢中になった。

でも、完全な片想いだった。

セシルの気持ちは全く自分に無かった。

それを自覚しながらも、燃え上がった恋心に勝てずにセシルを抱いた。
彼女は少しも抵抗せずに、自分を受け入れてくれた。
でもただ人形のように寝ているだけだったけど。

それでも好きで、とにかく好きで。

何度も伝えているうちに、少しずつセシルも変わってきたような気がしていた。

最近はちゃんと、独りよがりではなく、
セシルも楽しんでくれているような気がしていたのに。

少しずつ気持ちが近づいている気がしていたのに―――。

クリスはやるせない想いを胸に自分の部屋へと戻って行った。


そしてその日以降、1ヶ月以上経った今も、
セシルの部屋には行けない日々が続いているわけだった。
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