《それが罪だと言うのなら、私は喜んで罰を受けよう…。》
金夜叉と呼ばれた男は、蔑むような視線を慎に向けた。
だが、それをまるで気にしていないかのように微笑むとゆったりと長椅子に腰掛けた。




『それで、私に何の御用ですか?』
〔分かっているだろ、そのガキの事だ。〕
『シンくん、奥にいてくれますか?』
「う…うん。」
『良い子ですね。』



シンは何かを感じ取ったのか、大人しく子ども部屋へと入っていった。
金夜叉は、それが余程気に入らなかったのかシンの消えた方に向かって手のひらを向けた。

だが、その手は慎によってしっかり握り締められていた。



『不躾ではありませんか?ヒトの家にいきなりやってきて…挙げ句に破壊行為をしようとするなんて。』
〔くっ…離せ!!〕



慎は黙ってその腕を捻り上げると、軽々とその長身を床に叩き付けたのだ。
力量だけなら、現時点では金夜叉が上だろう。

しかし、まだ僅かに残る慎への恐怖が金夜叉の動きを鈍らせてしまっていたのだった。


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