《それが罪だと言うのなら、私は喜んで罰を受けよう…。》
『帰りなさい。貴方では、私に勝てない。』
〔バカに、するな!〕


ヒュン!と音を立てて、槍を振り抜いた金夜叉だったがその切っ先は慎を捕らえる事が出来ずに床に突き刺さった。

目の前の震える指先を見つめ、軽く溜め息をつく慎。
そこには、現役を退いた今も神としての威圧感や威厳が存在していた。



〔くそ、何故だ!もう神である事を棄てた貴様に、何故勝てない!〕
『覚悟が足りないぞ、金剛夜叉明王…。』
〔っ……!?〕



ズッシリと両肩にかかる重圧に、耐えられなくなった金夜叉はそのばに膝と手をついて苦しそうに息をしている。

未だ、弥勒であった頃の慎の支配から抜け出せていない彼に、この任は重すぎた…。




『仏界に帰れ、今すぐにだ。』
〔だ、れが…っ。〕
『私に手をかけさせるか…愚か者め。』




すっかり弥勒のカオに戻ってしまった慎は、冷ややかな視線を相手に向けるとスッと手をかざした。

その時…。




「だめーっ!!」
『っ!?』



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