ごめんね…そばに居られなくて

出産

忘れもしない11月の末、寒い日が続いて冬の気配を感じる日。AM8：30手術室に入った。点滴を両腕に打たれ、数分すると気分が悪くなり、意識が遠退いていくような感じがした。このまま、死んでしまうのかと思った。下半身に麻酔をかけるため、腰に注射の針が刺さった。辛かった。早くしてほしいと思った。
麻酔が効いたのか、感覚が麻痺してきた。下腹部に何となく切られている感触があり、不安が募る。
それを我慢していると、お腹から何かひっばり出される感触があり、そのあと、ふぉぎゃふぉぎゃ
とかよわい泣き声。生まれた。涙が後から後から流れ出る。嬉しくて、またなんとも言い表せない感動とともに留まることない涙が溢れた。母になったのだ。
こんな弱い自分が母になる不安と勇気が入り交じった感情もわいてきた。
綺麗に産湯で洗われた赤ちゃんを看護婦さんが見せてくれた。「お母さん、女のこですよ」しわくちゃの赤いおさるさんみたいだったけど、嬉しくてまた、涙が出た。この幸せな時間のまま時間が留まればいいなぁと思った。