この想いは・・・。
「お先に失礼します」
大好きな人は大好きな人の元に帰る。
それをあたしはいつも見て帰る。
「お前も見つけろよ・・・信じゃない大切な人を」
空くんは眉を下げて言った。
谷口くんの親友の空くんは唯一あたしの気持ちを知ってて、あたしの気持ちを共感できた人。
今は空くんは彼女の愛子さんを大切にしてるけど前は谷口くんの奥さんが好きだった。
あたしはあの時、なんとなく期待していた。
空くんが晴子さんを奪えば、あたしにもチャンスが来るって・・・。
そんな考え甘いだけなのにね・・・。
―――――そしてそんなことしか考えられない自分は最悪で最低な人間だ。
「空くん」
「なんだよ」
「幸せになってね」
「坂野?」
辛い恋をした分、空くんには幸せになってもらいたかった。
「じゃあ、あたしも帰るから。お疲れ様」
「・・・お疲れ」
あたしは最後に空くんに笑って帰った。
会社に出ると会社を見つめた。
ここに勤めて5年か・・・。
とても長くて、とても短かったな・・・。
あたしは会社に頭を下げて帰った。