俺様先生と秘密の授業【完全版】
 言って、吉住さんは。

 ぴしり、と岸君に指を突きつけた。

「お前は、天竜組の四代前の総長で、天竜組を作った藤沢 天竜(ふじさわ てんりゅう)の甥(おい)だ」


「「何だって?」」


 吉住さんの言葉に、その事実を知らなかったらしい兄貴と直斗の声が重なり。

 沈黙していた狼から、次々とざわめきが走った。

 なぜなら。

 藤沢 天竜って言えば。

 兄貴と直斗の直接の因縁の相手だったから。

 兄貴が、髪を切らない理由。

 そして、この時期に、みんなを集めて、走る理由に関わる、本人……の。

 急に辺りは殺気立った。

 ざざざっ、と音を立てて。

 あたしたちを囲む狼達の輪が、狭まった気がする。

 そんな雰囲気に、逆らうように。

 岸君は、声を張り上げた。

「例え、身内がそうだとしても。
 どこに所属して、何をするのかは、本人が決める事じゃないんですか?
 特殊な場所に生まれた事自体が罪で。
 それを、回避出来ないなんて!
 時代錯誤以前の問題じゃないですか……!」

「ただ、親戚に、そう言うヤツが居るだけなら、俺だってこんな所で公にしないさ」

 岸君の言葉に、吉住さんは肩をすくめた。

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